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「青山純 一つ打ちの真髄(DVD)」を観た感想

青山純 一つ打ちの真髄 [DVD]

青山純 一つ打ちの真髄 [DVD]

 

2013年に53歳の若さで亡くなられた名ドラマー、青山純氏の教則DVD(2011年発売)である。アマチュアドラマーとして細々と活動している私は、定期的に青純ブームが巻き起こる体質で、ここ数日再び青純ブームが発生。前から気になっていたこの教則DVDを勢いで購入してみた。

Amazonのレビューにもあるように、青山氏は晩年体調を崩されていたのか、このDVDだとあまり元気がない。現役バリバリの頃に比べると、話し方だけでなく叩くリズムもどことなく弱々しく、観ていて少し寂しい気持ちになってしまう。

内容としては、「フォルテッシモで1つ打ちを繰り返して腕のバネ(筋肉)を鍛える」という基礎練習から始まり、8ビート、片手16ビート、ハーフタイムシャッフルなどの基本パターンを青山氏がただひたすら叩いていくという、地味でシンプルなもの。


『青山純 一つ打ちの真髄』 feat.伊藤広規,松下誠,MAC清水 ドラム教則 Digest

「一つ打ちの真髄」というタイトルからもわかるように、ダブルストロークやパラディドルといった要素は一切出てこいない。「すぐ使えるフィルパターン」や「効率の良く鍛えられる練習パターン」のような派手な要素もない。青山氏がとにかく「一つ打ち」で8ビートや片手16ビートの簡単なパターンを叩いていくのみという構成だ(しかも、ひとつのパターンが結構長い)。

正直なところ、昨今のドラム教則ビデオと比べると不親切極まりない内容で、楽譜やテロップ解説なども画面にほぼ登場せず、教材としても作り込まれていない。青山氏による解説も最低限なので、何故このパターンを練習する必要があるのか、気をつけるポイントは何かなど、あまりよくわからないまま進んでいくことも多い。ドラム初心者にはオススメできない教材だ。

どちらかというと、青山氏のシンプルなドラムが好きで、そのエッセンスを少しでも知りたいという人向きのDVDだろう。青山氏が基本的なパターンを叩いている姿を観て、グルーブ感やタイム感、表情の付け方などを自分なりに感じ取れるのであれば、十分に価値がある。前述の通り、本作の青山氏はあまり元気がなく、リズムも若干不安定気味だ。しかし、40年以上も日本のミュージックシーンを第一線で支えていた、あの青山節は随所に感じることができる。

そもそも本作は、青山氏のキャリアの中で唯一の教則DVDであり、青山氏が叩いている姿を存分に観られるというだけでも非常に貴重なものなのだ。

個人的には、冒頭の「とにかく最初はフォルテッシモで叩いて筋肉を鍛えるべし」という教えは非常に共感している。ドラムを叩くときには脱力するのが基本だが、そこに至るまでには最低限の筋肉が必要だからだ。山達やMISIAのライブを支えた極上のサウンドがすべてがこの一つ打ちの練習から来ていると考えると、私も初心に返ってフォルテッシモで叩く練習をしようと思った次第である。その他にDVDで提示されたパターン練習などはやらない気がするが、時折見返して青山氏のエッセンスを盗んでいきたい。


Jun Aoyama Memory's

なお、青山氏がドラムを叩いている映像をほかにも観たいのであれば、2000年代~2012年前後に行われたMISIAのライブツアーがオススメ。MISIAのライブ映像はiTunes Storeでも購入可能だ。特にTHE TOUR OF MISIA 2003の「つつみ込むように……」は、キレッキレなバスドラムやいぶし銀のフィルで曲全体を盛り上げているので聞いてほしい。